「闘将・藤原隆充選手引退」
昔のプロリーグには戦力均衡のためにウェバー方式の新人ドラフトとエクスパンション
ドラフトというのがあり、新規参入チームには既存チームから3人まで指名する事ができ、
既存チームはそのエクスパンションドラフトから選手を守るためにプロテクトという
制度がありました。そのエクスパンションドラフトにより、
当時の新潟を象徴していた藤原選手を滋賀が指名したことにより、
藤原選手と同じチームで過ごすチャンスを頂きました。
今だから言えますが、当時は本当に色々な方々から連絡があり、
「藤原選手は新潟に必要なんだ」
「藤原選手を新潟に残してほしい」
という、中にはドラフト指名した事自体にかなり怒って連絡してくる方もおり、
それだけ地域の方々に愛され、必要とされてきた選手なんだと今でも覚えています。
当時の移籍に関して新潟の方々、藤原選手、ご家族も涙を流されたと聞いており、
きっとキャリアの中でも大きな大きな決断だったと思います。
藤原選手が出身の九州産業大学はオールドカレッジバスケファンにはたまらない、
インカレで関東リーグの強豪をUP SETしまくった「九産旋風」という、
ムーブメントを巻き起こしたリスペクトされている大学です。
当時は九州リーグや地方リーグのチームがベスト4というのはあり得ない時代でしたので、
そのインパクトはバスケ界に衝撃を与えました。
その時代をギリギリ知る藤原選手だからこそあのハングリーなメンタリティーがあったんだ
と勝手に今でも信じています。
ただ当時はプロリーグはありません。
実業団の門は限りなく狭い時代でしたので、卒業後の藤原選手は韓国プロリーグKBLを
目指し、入団テストを受け、実際に加入を検討していたチームは外国籍選手枠のために
帰化まで検討していたと聞いています。
当時はそれくらい国内でバスケを続ける事が困難だった象徴的な出来事だと思いますし、
韓国プロリーグまでチャレンジすること自体を自分はリスペクトしていました。
それと同時期が実業団休廃部の時代と重なります。
大和証券のバスケットボールチームが廃部となり、チーム救済のために名乗りを上げた
新潟で日本初のプロバスケットボールチームとして新潟アルビレックスが
生まれる事になり、そこでチャンスを得た藤原選手のプロキャリアがスタートするという、
まさにバスケット界激動の時代の真っ只中を走り切った選手の一人だと思います。
藤原選手がリスペクトを公言されている、群馬の平岡HCは新潟での現役時代、
ハートを前面に出すプレイや1つのルーズボールでアリーナを沸かせることができた、
今も語り継がれる新潟のレジェンドです。
その平岡HCのスピリッツを受け継いだ藤原選手も、闘志やルーズボールのこだわりが
持ち味といっていいほどで、フロアへ飛び込んだり、コートの外までボール追いかけ
飛び出すシーンにベンチから見ていても何度も鳥肌が立ち、ブースターの心を
いつもファイヤーさせていました。
当時はけして十分とは言えないサポート体制を補うために、トレーナーを目指す学生や
一般の方にインターンシップとして、チームのサポートスタッフとして加わってもらって
いました。
あれは確か、レギュラーシーズン最終戦の帰りのバスの車内。
シーズン通して練習とゲームにボランティアとして携わってくれたインターンに
ワラさんからチップを渡そうとチーム全員に声掛けし、インターン全員に選手達からの
感謝の気持ちとしてチップと大きな拍手を送ってくれました。
今はもう無いのかもしれないですが、NBAなどでは1年間選手をサポートしてくれた、
トレーナー、サポートスタッフにチップを渡す文化があると聞きていましたが、
キャプテン・ワラさんの声掛けに、選手が賛同してくれたシーンにインターンの子が
バスを降りた後、チップというよりその男気に涙していたのを覚えています。
プロの世界に長くいながら、どのシーンでも常に熱い選手でした。
オフになると避けられない、選手の契約満了や移籍のたびに送別会を開き、
最後まで泣いていたのはいつもワラさんでした。
チームが大きく連敗してしまった時、他の人やコート外の事を気にしたくなるような
時こそ、何度も聞いた「モト、みんなで飯食わなあかんやろ。」と
コミュニケーションのための食事会をよく開いてくれました。
飯を食ってもなんともならないんですが、なんかワラさんと飯食うと
なんとかなるような気がしていたのはきっと自分だけじゃないと思います。
こういうエピソードがおそらくどのチームでもあったキャリアだったと思います。
皆の心に火をつける。
熱い事は恥ずかしい事じゃない。
人のせいじゃなくて自分のせい。
色んな事を学ばせてもらいました。
今後のキャリアはまだちゃんと聞いていませんが、ワラさんのような人が
これからもバスケ界に携わってもらえれば、再び地域を熱くしてくれる気がしています。
いろんなケガを抱えながらの現役やったと思いますが、お疲れ様でした。感謝しています。
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